「何ィィィイィィイ!?土曜だとォ!?」
このウルサイのは横山満(ヨコヤマミツル)。
何の因果か、七クラスあるこの学校で三年間同じクラスになっている。
「そーゆーこと。義理すら期待できねーな。おめでとう。」
「すらってなんだコノヤロウ。きっと、十四日にはわざわざ家まで本命を」
いつもと変わらないやりとり。
ミツルが興奮気味に持ちかけて、
「ありえん。」
俺が軽く切り捨てる。
一年の時から、何も変わっていない。
「ひでーなおい。つーか。お前はどうなんだ?欲しくないのか?義理でもッッ!」
「別に。」
「お……、お……、お前はっ!それでも!」
嫌な予感。
こういうとき、止める、という選択肢は間違いだ。
さすがに、三年目にもなればわかってくる。
正解は、防御。俺は耳をふさぐ。
「それでもお前は男なのか本田ァァァアァァアァァアアァ!!」
「その前に、お前はバカだろ・・・・・・」
しっかりとふさいだはずなのに、耳が痛い。
見回すと、教室に居る全員が耳をふさいでいた。
「どこからそんな声出してんだ、お前は。」
「口。」
「あー、わかった。俺が悪かった。だからもう喋るな。」
見せ付けるようにため息をついてやる。
バレンタイン、ね。
もうそんな時期か。
毎年縁がない上に、一年も間が空くんだ。
覚えているわけがない。
そりゃあ……、期待してないわけでもないけど……。
チラリ、と教室の一角に目をやる。
ま、ヘタな期待は、な。
「じゃーな本田」
「ああ、じゃな」
今日の授業は終わり。俺たちは早々に学校を出る。
三年生は部活を引退しているから、すぐに帰ることが出来る。
まぁ、かといって勉強するわけでもないのだけれど。
「はぁ〜、あのバカのせいで意識しちまった……。」
あの会話のせいで、残りの授業は本当に大変だった。
気がつけば、ある一点に目が行っている。
おまけに、必死で目を離しても、気になって仕方がない。
幸いだったのは、向こうがこっちを向かなかったことだ。
もし、目があったりしたら、恥ずかしくて教室を飛び出していたかもしれない。
「いつから、なんだろ」
空を見上げると、真正面に太陽があった。
まぶしい。
本当に、いつから意識するようになったんだろう。
一年で同じクラスだった時は、気にもならなかった。
二年でクラスが離れた時も、なんとも思わなかったはずだ。
だとすると、三年でまた一緒になってからか。
いつかに比べて、最近はまだマシになってはいるけど
今日みたいに意識してしまうと、もうダメだ。
「あ゛あ゛ー!!もう!」
だんだんイライラしてきた。
なんでこんなに気になるんだよ。
つーか、気になるんなら告っちゃえばいいじゃねーか!
それでOKなら、何の問題もないし。
フられちまえば、それで諦めがつくじゃねーか。
そうだよ、そうすればスッキリするじゃねーか。
「……でも、なぁ。」
それが、できない。
やっぱり、怖いんだと思う。フられることが。
情けない。本当に。
あー、もう、さっさと寝よう。
ヤなコトは寝て忘れる。これが一番だ。