目が覚めた。
目覚めは非常に悪いほうだけど
なぜか、意識がはっきりしている。
時計を見る。
まだ、日が変わってすぐだった。
「なんだよ……?」
呟く。
寝なおそうと思っても、寝付けない。
……。
何を思ったか、ベッドをおりてみる。
「寒っ……」
思わず身震いをする。
窓の外が白い。
……白い?
まだ、外は暗いはずなのに……。
コートを羽織り、家を静かに出る。
外は、雪が降っていた。
それなりに積もっている。
僕は一つ頷いて、走り出した。
何故走っているのか。
そんなものわからない。
どこへ行くのか。
わかりきったことだ。
公園。
なぜわかっているのか。
わからない。
ただ。
呼ばれたような気がした。
何か、感じたような気がした。
そして、僕は公園に駆け込んだ。
「……っ、はぁ……、はぁ……。」
無我夢中で走ってきたので、息が切れている。
とにかく、いつものベンチに座って休むことにした。
ようやく息が落ち着いてきたころ。
「よかった……。」
聞きなれた声。
「ここへ来れば、会えると思ってた……。深夜だから、少し心配してましたけど……。」
目の前に、女の子が一人。
見慣れた、色白の。
「澄沢、さん……。」
「こんばんは。」
呆然としている僕に、彼女は微笑む。
「え、あ、こんばんは……。っじゃなくて、どうして、こんな時間に?」
彼女の微笑みが消える。
「私、今日……もう昨日、ですね。公園に、来なかったですよね?」
「うん。どうしたの?」
頭の中を渦巻く予感を無視して尋ねる。
「私、昨日、ここへ来る途中で、急に発作が出たんです。
しばらくして発見されて、病院に連絡されたんですけど……。
そのときはもう、手遅れ……というか、限界、でした。」
「と、言うことは、目の前にいるのは……?」
「実感はないんですが、幽霊とか、そういう類だと、思います。
最期に、どうしても光弥君にお別れが言いたくて。でも、光弥君の家がどこかわからなくて。
それで、賭けに出たんですけど……、会えて、よかった。」
「なんで、なんで、お別れだなんて言うんだよ!」
思わず、叫んでしまっていた。
そんな僕を見て、悲しそうに目を伏せながら、
「残念……、ですけど……。」
彼女は、本当に悲しそうに答える。
「私の体は、完全に壊れてしまっています。
本当なら、この世に留まっていられる時間も、もうないはずなんです。」
「そうか……。」
震える声で、呟く。
「楽しかったよね。何もせずに、ただ話すだけの毎日が。」
「本当に、そうですね。いい思い出です。」
思い出しているのか、顔がほころんでいる。
「でも……。」
また、彼女の顔が曇る。
そして、泣き笑いの表情になる。
「でも……、できれば、私のことは忘れてください。」
「えっ……!?」
その言葉の意味がわからず、思わず訊き返す。
「私は、もう、この世に存在していません。
光弥君がこの先過ごしていくために、私との思い出は邪魔なだけです。
だから……。」
「そんな!何をっ!?」
彼女は、ゆっくりと首を振る。
そして、また半泣きのまま笑顔になって、口を開く。
もう、言葉も聞こえない。
彼女の体が、少しずつ、薄くなっていく。
「澄……っ、香奈!!」
思わず呼び捨てになってしまったが、構わず彼女の手を掴もうとする。
だが、すり抜ける……。
呆然とする僕に、彼女は笑顔で語りかけ、そして消えた。
最期の言葉が僕に届くことはなかった。
――ありがとう。光弥君。
勝手なお願いだけど。言ってること、違うけど。
できれば、私のこと……――