「これで、三対二だね。」
「うーん、負けてしまいましたね。」
あはは、とどちらからとも無く笑って、ベンチに向かう。
「いつごろから待っていたんですか?
まさか、昨日私があんなこと言うから、早く来たんですか?」
イタズラっぽい笑顔で訊いて来る。
「残念。僕はあんまりそういうことは気にしないんだ。ついたのも今さっきだよ。」
「……昨日は気になるって言ってませんでしたっけ?」
「その場のノリだよ。」
「なぁんだ。」
軽いため息。
「白木君って、映画とか好きなんですか?」
唐突に、こんな質問があった。
「え?まぁ、嫌いじゃないけど。」
「どういうものをよく観るんですか?」
「そうだなぁ……。」
僕は記憶の中から観たことのある映画を思い出す。
実は、ジャンルは問わず、雑多に観ている。
暴走トラックを止めた男の話、古代ローマでの闘いの話。
学生たちの間で起こる怪現象の話、ドタバタコンビの英雄譚、などなど。
「よかったぁ。」
とりあえず何個か名前を挙げてみると、唐突に彼女が呟く。
「え?」
その意味がわからず、僕は反射的に訊き返した。
「いえ、あの……。明日って、空いてますか?」
「明日って、大晦日、だよね。うーん、空いてるとは思うけど。」
「それなら、映画を観に行きませんか?ちょうど、白木君も観てないものだと思うんです。」
あぁ、なるほど。かぶってないかを心配してたのか。だから、よかっ……
「って、ええぇぇぇぇ!?」
思わず、叫んでしまった。
「え、え?あの、ダメ、ですか?」
突然の大声に驚いた彼女が、次第に小さくなっていくのがわかる。
「あ、いや、全然ダメじゃないよ!」
慌てて否定する。
「ただ、」
「ただ?」
彼女が反復する。
「ちょっと、驚いたから。いいの?僕なんかで。」
そう訊くと、彼女はイタズラっぽい笑みになる。
「ほかに、一緒に行く人が居ないからですよ。
しゃーなし、ってやつです。」
「うわ、何それ。ひどいなぁ……。」
苦笑しながら返す。
「あはは、冗談ですよ。」
僕の反応を楽しむようにころころと笑うと、突然笑いを収めて、真剣な顔になった。
「白木君とだから、行きたいんです。」
これにもまた、僕は苦笑で返す。
「うーん、それはそれで、恥ずかしいんだけど。」
「もう、どうすればいいんですか?」
二人して、軽くにらみ合う。
そして、やっぱり、
同時に笑い出す。
「それじゃあ、明日の朝、ここで。」
彼女は、そう言って帰っていった。
朝、か。少し苦手だけど、遅れないようにしないと。
「ただいまぁー。」
家に着く。
「母さん、僕、明日朝から出かけてくるから。」
「何お前。このクソ忙しいときに出かけるってか。」
母の代わりに、アニキが反応する。
「うっせー。もう約束したんだから。」
まったくこいつは、と呟いてアニキが首を振る。
そして、小指を立てる。
「コレか?」
「バーカ。」
いつかしたやり取りをして、部屋に戻る。