7日目


「明けまして、おめでとうございます。」
「うん、おめでとう。」
今日は珍しく、二人が公園の入り口で出会った。
「今日は引き分けだね。」
「そうみたいですね。」

近くの神社までは、歩いて三十五分。
そう遠くも無いので、歩くことにした。

初詣、か。
よくよく思い出してみれば、これが初めてだった。
今日が、まさに文字通り「初詣」になるわけか。
「そういえば、澄沢さんは、今までに初詣に行ったことってある?」
「はい、ずいぶん前までは、毎年行ってました。最近は……、行ってませんね。」
「ふぅん、どうして?」
「え、その……、」
と、彼女は少し言葉に詰まった後、
「面倒くさく、なっちゃって。」
あはは、と照れ笑いする。

それからしばらく歩いて、神社まであと十分くらいという距離まで来たとき。
「そういえばさ、」
そこまで言って振り向いたとき、僕は固まりそうになった。
しかし、ここで固まっているわけにはいかない。僕は咄嗟に動いた。
「危ない!」
彼女が、急に倒れかけたのだ。
抱きとめてみると、彼女は気を失っていた。
とりあえず、近くで休めそうな場所を探す。
このあたりは、都会のくせに公園がやたら多いから助かる。

それから三十分。
「うーん……、ここ、は……?」
彼女が目を覚ます。
「よかった、気がついた……。ここは、神社の近くの公園だよ。」
「あぁ、私、また気を……。」
彼女は肩を落として項垂れてしまった。

「ねぇ、澄沢さんって、体悪いの?」
不躾とは思ったが、さすがに心配になったので、訊いてみた。
「あ、いえ、貧血、なんですよ……。」
「貧血、かぁ。」
どうやら、そこまで大変なものでもないようだ。
そのことにほっとしたけれど、とにかく、彼女のために一時間くらいここで休むことにした。

「あの、ごめんなさい……。」
唐突に、謝られる。
「せっかく、付き合ってもらってるのに、気を失っちゃって……。」
顔をあげない。どうやら、さっきのことを相当気にしているようだ。
「ん?気にしなくていいよ。」
「え、でも……。」
「僕がいいって言ってるんだから。それに、体弱いんでしょ?だったら、仕方ないって。
 ほら、もう気にしないで。病は気から、それ以上体に負担をかけるつもり?」
「あ、はい、ごめんなさい。」
「なんであやまるのさ。」
苦笑をしながら、また歩き出す。

そして、ようやく神社につく。
もういい時間なのに、人はまばらだ。
こっちとしてはそのほうが楽でいいんだけど。

二人並んで賽銭箱の前に立ち、セオリー通り五円玉を投げ込む。
二人そろって手を合わせて、長い沈黙。

帰り道。
「何をお願いしたんですか?」
澄沢さんが聞いてくる。
「んー、これからもずっと、澄沢さんと一緒に居られますように、って。」
「やですねぇ、冗談ばっかり。」
笑顔で、わりと思いっきりはたかれる。
「いてっ!……じゃあ、澄沢さんは?」
「私は……。」
少しだけ間をあけて
「今年一年の無病息災、です」





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