8日目


今日もまた、いつもの公園に行く。
彼女と出会って、まだ一週間くらいしか経っていないはずなのに、もうずいぶんと昔からの習慣のように思える。
しかし、今日の公園には、いつもの雰囲気などはなかった。

今日も、いつものように公園につく。
今日は、どっちの勝ちなのだろうか。
そう思いながら、確認するようにいつものベンチを見る。
そして、思考が一瞬停止した。

彼女が、ベンチの上でぐったりとしていた。
最初は寝ているだけかとも思ったが、さすがにそれは無いだろう。
昨日のこともある。すぐに駆け寄る。
息はある。しかし、苦しそうだ。
ただでさえ白い顔が、さらに白くなっている。
これは、ただ事ではない。
素人目にもそう思わせる状況だった。

「そうだ、救急し」
公衆電話を探そうとした僕の手に、何かが当たる。
見ると、彼女が弱弱しく僕の手を掴んでいた。
「大……丈……夫、です……。」
なんとかそれだけ言うと、また、苦しそうに息をつく。
「よかった、気がついたんだね。……でも、本当に大丈夫なの?」
彼女は弱弱しく頷く。
「はい……。いつもの、発作、です。すぐに……、おさまり、ます。」
そう言って、また目を閉じる。
少し慌てたけれど、息が穏やかになっているのを確認して、なんとか自分を落ち着ける。
そのまま、彼女が目覚めるのを待つことにした。

発作?発作って、なんだよ。貧血じゃなかったのか?
それに、ずいぶん苦しそうだし……。
彼女は、本当は、どうなっているんだ……?
そんな考えが、ひたすらに頭の中を回っていた。

しばらくして、彼女は目を覚ました。
「白木君、その……」
「貧血じゃ、ないよね?」
自分で想像していた以上に、固い声になってしまった。
「はい、その……。そう……、です。」
「できれば、教えて欲しいんだけど……。構わない、かな。」
彼女はしばらく黙り込み、ややあって頷く。
「実は、私、病気なんですよ。何か、重い病気で、現代の医療技術では治せない、いわゆる、不治の病、ってやつです。」
「不治の、病?」
想像していた以上に重い答え。
「医者には、新学期を迎えることはできないだろう、そう言われました。
 ……実は私、もう一つ、嘘をついていたんです。」
「学校……。」
思わず呟く。
「はい。入学してすぐに体調を崩して、そのままずっと通ってないんです。」
「そんな体で、毎日、ここに……?」
頷く。
「実はあの日、久しぶりの気分転換で散歩をしていたんです。そこで、白木君に出会って。
 私も、何で毎日会おうなんて言い出したのか、実はわからないんですよ。」
こんな体なのに、と小さく微笑む。
「もう、どうにもならないの?」
これにも、頷く。
「私の命は、後数日で消えるみたいです。そう言われたし、自分でも、なんとなく……。
 わかるんですよ。少しずつ、この体がだめになっていくのが。」
「そんな……。」
「白木君。」
突然、彼女の声がはっきりしたものになる。
「どうせ残り少ない時間なら、私、悔いの残らないように思いっきり楽しみたい。
 だから、これからも、毎日ここに来て。……迷惑、ですか?」
最後の質問に、僕は首を思い切り横に振った。





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